私は投資判断やリスク管理に「収益還元法」を中心と
した金融工学の考え方を使っています。
ここではなるべく簡単に、この金融工学のエッセンス
をご紹介してみます。
「金融工学」・・・名前は大げさですが、ロジカルな
判断方法とし知っておいて損はないと思いますヨ!
初めての方まずバックナンバーをご一読頂く事を
オススメします。
バックナンバーはこちら
「マネーゲームではない本当の投資」
一緒に考えて見ませんか?!
【アクリバ理論その18】最後の手段、裁定取引!
前回は
「プロのファンダメンタルズ分析でも、そうそう当た
るものではない。結果として現状の延長線になって
しまっているだけの事が多い。」
なんてお話でした。
なんだか「先の予測は不可能」と言っている様にしか聞こ
えませんよね・・・
でも、私は「Buy And Holdを超える方法はある」と考えて
います。ゆっくり進めてゆきますネ!
今回は裁定取引の話です。
【裁定取引とは?!:知っている人は飛ばして下さい】
本来の意味は価格差を利用して利益を上げる事です。
良くあるのが、日経平均現物と日経平均先物のサヤとり。
東京市場で日経平均が1万円の時に大阪の先物がもし2
万円だったら・・・先物を売り/現物を買いとします。
先物と現物は「清算日」には同じ値段になりますので、
先程の例だと価格差1万円が確実に利益になります。
※これは、あくまで例です。現実には10円前後しか値
差は発生しません。よって短期金利分をGETするの
がせいぜいです。
この様に「価格差」(歪と言ったりします)を見つけて、
それを利益にするワケです。上手く価格差さえ見つかれ
ば、極めてリスクの少ない手法です。
【ちょっと変わった裁定取引の実例】
面白い例では「ニッポン放送」と「フジテレビ」が有名
ですね。
2002年3月末のニッポン放送の時価総額は1400億円
でした。ところが、このニッポン放送が所持していた子
会社のフジテレビ株の時価は2500億円だったのです。
つまり、
1:ニッポン放送をすべて買い取って(1400億円)
2:資産のフジテレビ株をずべて売却(2500億円)
とすれば「絶対に儲かる」状態でした。
これに目を付けたある米ファンドが3年がかりで仕込み
フジテレビとライブドアの攻防が始まるや否や約 100億
円の利益を上げたそうです。
この米ファンドの行った方法もある意味「裁定取引」に
あたると言えます。本来の「サヤ取り」と若干意味合い
が変わっていますが、
「価値と価格の差が生じている場合、その差が将来縮小
することを期待しての投資」
が、広い意味での「裁定取引」です。
リスクの少ない確実な投資ですよね!
個人投資家の中でもこの歪に気が付いて、騒ぎになる前
に「ニッポン放送買い」としていた人もいるかも知れま
せん。
さて、当時のフジテレビとライブドアの攻防は覚えてお
られる方も多いでしょう。この「騒ぎが始まった後」の
ニッポン放送株、フジテレビ株、ライブドア株はまさに
マネーゲームの戦場でした。
しかし、この時点でゲームに参加しても、勝敗を分ける
のはもはや運でしかありません。正直言って「バクチ」
と言って良いでしょう。
後半のマネーゲームと前述の米ファンドの行動
○ 確実な手法で儲けを手にした「米ファンド」
○「自分のヨミは当たる」と信じてマネーゲームに参加した人々
両者には根本的な違いがある事はご理解頂けると思います。
【裁定取引の拡大解釈】
さて、先程の例の如く「現物と先物の値差」なら簡単な
のですが、
1:簡単ゆえに誰でも見つけることができる。
2:そして値差が発生すると、誰かがスグに反対取引
をしかける。
3:結果、大きな値差はほとんど発生しない。
と言う状況です。従いまして、「簡単な物」はさほど利
益につながりません。
そこで、世界中の「裁定取引屋」は、スグにそれとは分
からない物を含めて裁定取引の機会を捜し求めています。
そんな中で、「裁定取引」と言う言葉が
「市場価格が、何かの理由でその実質価値と間で差を生
じている場合、この差が将来縮小する事を見越して行
う取引」
と言う様に意味合いが変わって来ています。
そんなワケで最近は
「債券と株の裁定取引」
なんて言い方もされます。
これなんて「サヤ取り」とは根本的に違いますね!
でも、これら「拡大解釈」を含めた「裁定取引」は
テクニカル/ファンダメンタルズを否定してきた研究者
達の中でも比較的好意的に取られています。
こんな表現です
「明らかな市場の歪が将来修正される事を期待する手法
は比較的有効。但し、歪は簡単にはみつからない。」
【最後の手段、裁定取引!】
金融工学の基本に「無裁定価格理論」と言うものがあり
ます。これは
「どんな商品でも、市場価格は(いずれは)その価値に
等しくなる」
#この市場価格と価値が等しくなった状態を
#「無裁定状態」と呼ぶ様です。
と言うものです。
そして、この価格の変化を利益につなげる取引を広い意
味で「裁定取引」と言います。
そして、先程のニッポン放送の例は、この基本理論に沿
った極めて合理的な取引だと言えます。
さて、ここで「アレ?!」と思われる方も多いと思いま
す。
同じく金融工学の基本である「効率的市場仮説」と、
この「無裁定価格理論」は矛盾しているようにも感じら
れますね・・・。
そう、金融工学の基本に「効率的市場仮説」と言う物が
あります。
この「仮説」は
「市場はすべての情報を瞬時に織り込む。だから市場で
決定された価格は常に適正である」
つまり「裁定取引の機会は存在しない」と言ってるワケ
です。
ですが、今までお話したように「裁定取引の機会」は僅
かではありますが実在します。
そして、先程のニッポン放送の例では、収益を上げるの
に3年かかっています。決して「瞬時」ではありません。
ですから
「市場は完全に効率的という訳ではない」
と言えますよね!
とは言っても「市場はかなり効率的」なのです。
ですから、これまでお話した通り、テクニカル/ファン
ダ分析は(おおむね)通用しないのです。
そしてホトンドの場合
「下手に売買するよりBuy And Holdの方が良い」
となってしまいます。
ですが、もし「裁定取引の機会」が見つかって、それを
上手く活用できれば・・・
Buy And Holdを上回ることが出来るかもしれません。
ここは金融工学でも否定出来ない部分です。
これまでテクニカルやファンダメンタルズでのアクティ
ブ運用は「概ね意味を成さない」と申し上げて来ました。
ですから「裁定取引の機会活用」は、Buy And Hold」に
勝つ最後の手段と言えるかもしれません。
次回はこの「裁定取引」についてもう少し深堀してみた
いと思います。
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した金融工学の考え方を使っています。
ここではなるべく簡単に、この金融工学のエッセンス
をご紹介してみます。
「金融工学」・・・名前は大げさですが、ロジカルな
判断方法とし知っておいて損はないと思いますヨ!
初めての方まずバックナンバーをご一読頂く事を
オススメします。
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「マネーゲームではない本当の投資」
一緒に考えて見ませんか?!
【アクリバ理論その18】最後の手段、裁定取引!
前回は
「プロのファンダメンタルズ分析でも、そうそう当た
るものではない。結果として現状の延長線になって
しまっているだけの事が多い。」
なんてお話でした。
なんだか「先の予測は不可能」と言っている様にしか聞こ
えませんよね・・・
でも、私は「Buy And Holdを超える方法はある」と考えて
います。ゆっくり進めてゆきますネ!
今回は裁定取引の話です。
【裁定取引とは?!:知っている人は飛ばして下さい】
本来の意味は価格差を利用して利益を上げる事です。
良くあるのが、日経平均現物と日経平均先物のサヤとり。
東京市場で日経平均が1万円の時に大阪の先物がもし2
万円だったら・・・先物を売り/現物を買いとします。
先物と現物は「清算日」には同じ値段になりますので、
先程の例だと価格差1万円が確実に利益になります。
※これは、あくまで例です。現実には10円前後しか値
差は発生しません。よって短期金利分をGETするの
がせいぜいです。
この様に「価格差」(歪と言ったりします)を見つけて、
それを利益にするワケです。上手く価格差さえ見つかれ
ば、極めてリスクの少ない手法です。
【ちょっと変わった裁定取引の実例】
面白い例では「ニッポン放送」と「フジテレビ」が有名
ですね。
2002年3月末のニッポン放送の時価総額は1400億円
でした。ところが、このニッポン放送が所持していた子
会社のフジテレビ株の時価は2500億円だったのです。
つまり、
1:ニッポン放送をすべて買い取って(1400億円)
2:資産のフジテレビ株をずべて売却(2500億円)
とすれば「絶対に儲かる」状態でした。
これに目を付けたある米ファンドが3年がかりで仕込み
フジテレビとライブドアの攻防が始まるや否や約 100億
円の利益を上げたそうです。
この米ファンドの行った方法もある意味「裁定取引」に
あたると言えます。本来の「サヤ取り」と若干意味合い
が変わっていますが、
「価値と価格の差が生じている場合、その差が将来縮小
することを期待しての投資」
が、広い意味での「裁定取引」です。
リスクの少ない確実な投資ですよね!
個人投資家の中でもこの歪に気が付いて、騒ぎになる前
に「ニッポン放送買い」としていた人もいるかも知れま
せん。
さて、当時のフジテレビとライブドアの攻防は覚えてお
られる方も多いでしょう。この「騒ぎが始まった後」の
ニッポン放送株、フジテレビ株、ライブドア株はまさに
マネーゲームの戦場でした。
しかし、この時点でゲームに参加しても、勝敗を分ける
のはもはや運でしかありません。正直言って「バクチ」
と言って良いでしょう。
後半のマネーゲームと前述の米ファンドの行動
○ 確実な手法で儲けを手にした「米ファンド」
○「自分のヨミは当たる」と信じてマネーゲームに参加した人々
両者には根本的な違いがある事はご理解頂けると思います。
【裁定取引の拡大解釈】
さて、先程の例の如く「現物と先物の値差」なら簡単な
のですが、
1:簡単ゆえに誰でも見つけることができる。
2:そして値差が発生すると、誰かがスグに反対取引
をしかける。
3:結果、大きな値差はほとんど発生しない。
と言う状況です。従いまして、「簡単な物」はさほど利
益につながりません。
そこで、世界中の「裁定取引屋」は、スグにそれとは分
からない物を含めて裁定取引の機会を捜し求めています。
そんな中で、「裁定取引」と言う言葉が
「市場価格が、何かの理由でその実質価値と間で差を生
じている場合、この差が将来縮小する事を見越して行
う取引」
と言う様に意味合いが変わって来ています。
そんなワケで最近は
「債券と株の裁定取引」
なんて言い方もされます。
これなんて「サヤ取り」とは根本的に違いますね!
でも、これら「拡大解釈」を含めた「裁定取引」は
テクニカル/ファンダメンタルズを否定してきた研究者
達の中でも比較的好意的に取られています。
こんな表現です
「明らかな市場の歪が将来修正される事を期待する手法
は比較的有効。但し、歪は簡単にはみつからない。」
【最後の手段、裁定取引!】
金融工学の基本に「無裁定価格理論」と言うものがあり
ます。これは
「どんな商品でも、市場価格は(いずれは)その価値に
等しくなる」
#この市場価格と価値が等しくなった状態を
#「無裁定状態」と呼ぶ様です。
と言うものです。
そして、この価格の変化を利益につなげる取引を広い意
味で「裁定取引」と言います。
そして、先程のニッポン放送の例は、この基本理論に沿
った極めて合理的な取引だと言えます。
さて、ここで「アレ?!」と思われる方も多いと思いま
す。
同じく金融工学の基本である「効率的市場仮説」と、
この「無裁定価格理論」は矛盾しているようにも感じら
れますね・・・。
そう、金融工学の基本に「効率的市場仮説」と言う物が
あります。
この「仮説」は
「市場はすべての情報を瞬時に織り込む。だから市場で
決定された価格は常に適正である」
つまり「裁定取引の機会は存在しない」と言ってるワケ
です。
ですが、今までお話したように「裁定取引の機会」は僅
かではありますが実在します。
そして、先程のニッポン放送の例では、収益を上げるの
に3年かかっています。決して「瞬時」ではありません。
ですから
「市場は完全に効率的という訳ではない」
と言えますよね!
とは言っても「市場はかなり効率的」なのです。
ですから、これまでお話した通り、テクニカル/ファン
ダ分析は(おおむね)通用しないのです。
そしてホトンドの場合
「下手に売買するよりBuy And Holdの方が良い」
となってしまいます。
ですが、もし「裁定取引の機会」が見つかって、それを
上手く活用できれば・・・
Buy And Holdを上回ることが出来るかもしれません。
ここは金融工学でも否定出来ない部分です。
これまでテクニカルやファンダメンタルズでのアクティ
ブ運用は「概ね意味を成さない」と申し上げて来ました。
ですから「裁定取引の機会活用」は、Buy And Hold」に
勝つ最後の手段と言えるかもしれません。
次回はこの「裁定取引」についてもう少し深堀してみた
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