私は投資判断やリスク管理に「収益還元法」を中心と
 した金融工学の考え方を使っています。
 
 ここではなるべく簡単に、この金融工学のエッセンス
 をご紹介してみます。

 「金融工学」・・・名前は大げさですが、ロジカルな
 判断方法とし知っておいて損はないと思いますヨ!

 初めての方まずバックナンバーをご一読頂く事を
 オススメします。

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「マネーゲームではない本当の投資」一緒に考えて見ませんか?!
 
【アクリバ理論その19】裁定の距離とリスク

 前回は、もし「裁定取引の機会」が見つかって、それを上手く活
 用できればBuy And Holdを上回ることが出来る可能性がある。

 と書きました。
 
 今回はこの「裁定取引」に関して深堀してゆきます。

【裁定取引の苦労】

 前回「裁定取引の機会」が見つかれば、利益を上げる事は難しく
 ないと言う表現をしました。そして世の研究者達もこの事は認め
 ています。

 そして、世をにぎわせている「ヘッジファンド」は基本この手法
 をメインに収益を上げているとも聞きます。
 
 その反面「裁定取引の機会」は簡単には見つからないワケでもあ
 ります。

 事実、前回書いた様な、「先物と現物の鞘取り」なんて、世界中
 のコンピュータが監視していて、機会があればポジション設定/
 解消を自動でやっている状態。とても個人投資家が挑める領域で
 はありません。

 「ニッポン放送」の例で上げた「隠れた歪を見つけ出す」方法は、
 まだ個人投資家にも可能性はあります。しかし、とても大変。

 「四季報をじっくり見る」レベルではまだ甘く、株主資本の中身
 までも一点一点確認してゆく事になります。

 上手くマトを絞る方法があって、効率よく歪を探す事が出来れば
 良いのですが・・・。
 一概には言えませんが、個人投資家の資金レベルでこれをやるの
 は「割に合わない」気がします。

 #但し、これに類することを実行されている個人もいらっしゃい
 #ますし、REIT程度なら個人でも近い事が出来そうではあり
 #ますネ。(私も多少やってます)

 この「裁定取引の機会」探しはプロもかなり苦労しているようで、
 だんだん「拡大解釈」が進んでいます。

 そして

 「『絶対に儲かる』ではなく、『ある程度儲かる』を目指す」

 が、主流になりつつあるようです。

【裁定の距離とリスク】

 当然、「ある程度儲かる」と言う事は反対に言えば「ある程度損す
 る」事でもあり、リスクが存在すると言う事です。
 
 ですが、そのリスクを受け入れる事で「裁定取引の機会」が増えて
 、「期待できる利益」も増えると言うワケです。

 私も詳しくは存じ上げませんが、有名なソロスさんは、この手法の
 達人だとか・・・国をまたいだ債券と通貨の裁定取引・・・なんて
 やってしまうようです。

 この水準になると、もはや価格も場所も扱い高も違ってきます。単
 純に比較できる物ではありません。

 強いて一般論で言えば、この投資対象二つの関係が遠い程

   「裁定取引の機会が増」「期待できる利益が増」

 とはなってゆくはずです。また、その反面

   「(裁定解消が成立せずに)失敗するリスクも増」

 となって行きます。
#一応これを示す方程式もあったりしますけど、説明は止めておき
 #ますネ!

 例えば「金と銀の裁定取引」より「金と水の裁定取引」の方がリス
 クもリターンも大きい・・・というイメージです。
 ※「金と水の裁定取引」は実在はしないと思います。(笑)

 これが例えば
 「リスクが2倍になっても利益が3倍」ならやる価値はあ
 るという事です。

 もう一つ、「時間を越えた裁定取引」なんて概念も存在します。
 本当なんですヨ。

 これは現物と先物のサヤ取りではありません。
 
 例えば
 「同じ物の今と1年後との裁定取引」
 なんて話です。意味不明ですよね(苦笑)

 やることは簡単
 「今買って1年後売る」又は「今売って1年後に買い戻す」
 だったりします。

 こうなると「普通の投資/投機と何が違うの?!」と言いたくなり
 ますよネ。

 ですが、これでもなお
 「普通の投資/投機」と「裁定取引」の間には考え方の違いがあっ
 たりします。

【裁定取引と呼ぶ範囲】

 さて、ここで「無裁定価格理論」の定義に戻ります。

 「どんな商品も、市場価格は(いずれは)その価値に等しくなる」

 そして、「市場価格」が「その価値」に落ち着く時の値差を利益に
 つなげるようとするのが「広義の裁定取引」です。

 「普通の投資/投機」との違いは何でしょうか?!

 結論を申し上げます。

 1:裁定取引は「市場価格」と「価値」の差を見つける事が全ての
   スタート。反対に差がなければ仕掛けない。

 2:裁定取引は市場価格と価値の差が「いずれ無くなる」と考える。
   しかし、その時期や理由は考えない。(必要が無い)

 分かりにくいですよねぇ?!
 
 簡単に言い直します。

 通常のアクティブ投資では

  「値上がりしそうだから買う」
  「値下がりしそうだから売る」

 との発想をします。
 しかし、裁定取引ではこの様な発想はあまりしません。

   「安いから買う」「高いから売る」だけです。

 つまり、「事実のみに着目して将来の予想はしていない」と言う感
 じです。

 そしてこれが、唯一(と言って良いでしょう)
 世の研究者達が可能性を認めている手法だという事です。

 そして世をにぎわせている「ヘッジファンド」も、基本はこの手法
 を研究し続けている様です。

【裁定取引とバリュー投資】

 おそらく、このシリーズをずっと読んで下さった方々は
 「ソレが言いたかったのね」
 と思われた事でしょう。すごく回り道をしました。(苦笑)

 まだお気づきでない方の為に、私の結論を申し上げておきますネ。

 裁定取引の発想は、単純に言えば
 「安いから買う」
 「高いから売る」
 だけです。

 これは実はバリュー投資の発想とまったく同じです。

 つまり

 1:バリュー投資は「広義の裁定取引」と言う事ができる。

 2:いま投資の世界で「可能性」が認められている手法は、ほぼ
   「広義の裁定取引」のみ。
   これ以外の手法では(おおむね)Buy And Holdに勝てない。

 という事です。そして最後に

 3:バリュー投資を上手く活用できればBuy And Holdに勝てる可能
   性がある。

 と言う事です。(但し、価値を把握できればです。)

・・・と、ここまで書くと

 「え~!バリュー投資が『広義の裁定取引?!』
                   そんなワケないじゃん!」

 などど思う方が多発しそうですね!

 それで良いのです。信じないで下さい!
 信じる人が多いと私の儲けが減ってしまいます!(笑)
 ここは、これ以上の議論を避けておきます。

 それはともかく、「普通の裁定取引」と「広義の裁定取引」は、
 まったくの別物です。
 まして私のやっている年単位の「バリュー投資」はリスクがとても
 大きくなります。その反面、狙える利益も大きかったりするワケで
 す。

 ですから、「どう利益を確保しながらリスクをかわすか」が次のポ
 イントですよネ。

 次回は「現代ポートフォリオ理論」や「VaR」と言った考え方を
 使って利益を最大限あげながらリスクを抑える手法を検証してみま
 す。お楽しみに!

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2010.08.28 Sat l 投資技法 l top